きこえを補う工夫・ツール

【聴診器について】

聴診器はどうしていますか?というお問合せをよくいただきます。聴診器は患者さんの心音を聞いたり、呼吸音を聞いたり、時にはお腹の腸の動きを音で確かめたり、また血圧を測ったりするときによく使われます。ドラマでも医師が聴診器を首から下げていたりする場面をよく見かけますね。医師や看護師を象徴する医療器具として聴診器は有名ですね。
そのため、聴診器の音が聞こえない聴覚障害者には医療の道は難しいのでは?というイメージが持たれやすいです。
一方で、実際の医療の現場では、聴診器はあれば便利だけれども、必須の道具というわけではありません。聴診は、問診、視診、打診、触診などいろいろな「診」の中の一つに過ぎません。レントゲンや心電図などが簡単にとれなかった時代、聴診は革新的な診察手技でしたが、現在は小さなクリニックでもレントゲンや心電図をとれたり、持ち運び可能な小型の超音波検査など、聴診の代わりとなる検査方法が増えました。血圧の測定も今は聴診器を使わない自動血圧計が中心となっています。また、聴覚障害者は見ることに長けている人も多いため、視診や観察によって補っている人もいます。
そのように、聴診器は医療従事者になるためにクリアしなければならない必須の道具では無いということをまずお話させていただきます。

それでも、聴力が活用できる医療従事者は聴診器を工夫して使っています。大きな機械を怖がる子供を相手にする小児科でも聴診器は便利です。アンプ付きの音を大きくできる聴診器もありますが、最近はBluetoothを用いて補聴器や人工内耳と連動させて音を聞けるものもあります。また、使用には熟練が必要ですが、音を波形にしてみる形にできる聴診器もありますので、当会の会員が使用経験があるものをいくつかご紹介します。
こちらにご紹介するもの以外にも、海外のメーカーなど多数の製品があると思いますが、医療器具の輸入にはいろいろな制約があり、手に入れにくかったり高価だったりします。残念なことに、国内で入手可能だった数少ない電子聴診器も相次いで販売中止となっていて、聴覚を活用している難聴の医療従事者は大変困っています。もしこちらをご覧になった皆様が情報をお持ちでしたら、ぜひ当会までお寄せください。

ネクステート 
こちらは各種聴診器を接続して有線やBluetoothでスピーカーやヘッドホン、直接補聴器や人工内耳と接続して使えるため、汎用性が高いです。別途聴診器も必要となるため、高価にはなりますが、小児用などお手持ちの聴診器を接続して使えます。現在当会で把握している国内で入手可能な唯一の聴診補助機器です。
聴覚障害者用の機器ではありませんが、オンラインの他、補聴器代理店での販売も行われており、聴覚障害者が購入しやすいよう工夫されています。

リットマン電子聴診器
こちらは見た目は普通の聴診器ですが、音が24倍に拡大されるものです。医療機関勤務の者にとっては購入も簡易で、多くの難聴のある医療従事者が活用していましたが、大変残念なことに現在販売中止となっており、再販を願う声が多くあります。

米国の聴覚障害をもつ医療従事者の会(AMPHL)のホームページにはアメリカで購入可能な各種電子聴診器が紹介されていますが、現在日本で購入するためには個人輸入が必要であり、医師免許の提示が必要になるなど購入には大きな壁があります。また、輸入は非常に高価で補聴器などと違い福祉制度も利用できないため、個人の負担が大きくなっています。
聴覚障害をもつ医療従事者がこのような機器を購入できるよう、国内の販売ルートの確保や購入支援が望まれます。

【透明マスクについて】
コロナ禍以前から、インフルエンザ流行期、花粉症対策などでのマスク装用、また手術など医療行為を行う際のマスク装用は、聴覚障害をもつ医療従事者の悩みの種でした。
私たち聴覚障害者は口型や表情も頼りにしてコミュニケーションをとっているからです。
特にコロナ禍で「全員マスク」になってしまうと、誰が話しているか、話している人がいるか?すらもわかりにくくなりました。
そんなマスク装用下でのコミュニケーションの対策は以下のように様々です。

・身振り手振り指差しなどボディランゲージで補う。
・筆談をする。
・文字情報での情報伝達をしっかり行う。(口頭だけでの指示を避ける)。
・音声文字変換アプリを利用する(UDトーク・Google文字変換・ポケトーク等)。
・補聴器や人工内耳用のマイクを利用する(ロジャー等)。
・手話を交えて会話する。
・透明マスクを使用する。

透明マスクは、とても有用ですが、国産の手に入りやすい医療用の透明マスクが販売されていないことから、実際にはなかなか普及していません。
聴覚障害をもつ医療従事者は高額な輸入品や、医療用ではない透明マスクを工夫して使用している状況で、職場で購入するとしても費用負担がとても大きいこともあり、なかなか理解が得られない状況です。
透明マスクは聴覚障害をもつ医療従事者だけではなく、難聴の患者さんや、認知症などコミュニケーションに課題のある方とのコミュニケーションにもとても役に立つものです。
最近は一般向けの透明マスクが販売されるようになってきましたが、使い捨てが可能な、医療用はまだ販売されておりません。
私たちは、医療や介護の現場で感染対策として使える透明マスクの開発と販売を切望しています。
現在国内で購入可能な透明マスクで、会員の使用経験のあるものをご紹介します。
(他にも有用な情報がありましたらぜひお寄せください。)
繰り返し使用するタイプ
ルカミィ(栄商会)
https://www.sakae-firm.co.jp/product/lookatme/
顔がみえマスク(ユニ・チャーム)
https://jp.unicharm-mask.com/ja/products/transparent.html
透明クリアウインドウマスク(COMPIA)
https://item.rakuten.co.jp/compia/acc0383-2/

使い捨てタイプ
透明不織布マスク(アイグッズ)
https://i-goods.co.jp/covid/original-transparent-mask/

更新日時(2023年2月)